警察官職務執行法の改正案 重大な犯罪の犯人が連絡に使った端末に接続して情報を取る「被害防止電子計算機調査」 前もって裁判官の許可を得ることが条件
テーマ:国会・治安|出来事:2026年10月5日(所信表明演説)〜2026年10月16日(法律案の提出)〜審議中|最終更新:2026年10月31日

法律案の中身は、警察庁のページに載っている法律案の本文・要綱・参考資料の字です。首相の演説は、国会会議録の字です(# は会議録の発言番号)。2026年10月25日の時点で、この法律案を審議した会議の会議録はありません。
要点
- 内閣は2026年10月16日、警察官職務執行法の改正案を国会に出しました。柱は2つです。①重大な犯罪で被害が迫っている人が特定されているとき、その人に被害を防ぐ措置をとることを、警察官の義務として書く(新しい第8条)。②犯人どうしの連絡や、被害者への連絡に使ったと認める理由のある端末に、警察が通信回線を通じて接続し、被害を防ぐのに要る情報を写して取る「被害防止電子計算機調査」を作る(新しい第9条)。10月25日の時点で、衆議院では委員会に付託されていません。(資料01・02・03)
- 端末への接続には、前もって地方裁判所か簡易裁判所の裁判官の許可が要ります。条件は、重大な犯罪が数人の共謀で行われたと認められること、被害を防ぐため緊急の必要があること、ほかの方法では情報を速やかに集めるのが著しく難しいこと、の3つすべてです。調べるのは、警察庁長官が指名した「被害防止電子計算機調査官」です。(資料02)
- 許可の範囲の外の記録は、ほかの警察官に渡してはならず、終わったら直ちにすべて消すと書いています。端末の使い手には、原則として後から通知します(被害を防ぐ妨げになるおそれがある間は遅らせる)。調査官の処置は公安委員会に報告し、公安委員会が許可どおりだったかを確かめます。また「被害防止電子計算機調査等の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」とも書いています。(資料02)
- 高市首相は10月5日の所信表明演説で、この見直しに触れていました。「いわゆるトクリュウなどによる悪質な犯罪の被害を防止するため、警察官の職務執行において、匿名性、秘匿性の高い通信アプリへの対応など、重大犯罪による被害を防止するための措置がとれるよう制度を見直します」。(資料04)
根拠
法律案の中身(本文の条ごと)
| 条 | 中身 | 出典 |
|---|---|---|
| 第8条(新) | 生命・身体に危険を及ぼし、又は財産に重大な損害を及ぼすおそれのある犯罪(「重大犯罪」)が行われた・着手されたと認め、被害が拡大・発生すると認められるなどの場合で、被害を受ける人(「被害切迫者」)が特定されているとき、被害を防ぐ方法の指導などの措置をとらなければならない | 資料02 |
| 第9条第1項 | 警察庁長官が、警察官のうちから「被害防止電子計算機調査官」を指名する | 資料02 |
| 第9条第2項 | 調査官は、犯人が犯人間の相互連絡又は被害切迫者への連絡に用いたと認める合理的な理由のある電子計算機に回線を介して接続し、被害切迫者の氏名・住所、犯罪が行われる日時など、措置に要る情報の記録を複写・取得できる。条件は、数人の共謀・緊急の必要・ほかの方法では著しく困難、の3つ | 資料02 |
| 第9条第3項・第4項 | 前もって、理由・対象の電子計算機・取る記録の範囲・行為の手順を書いた書面で、地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官の許可を得る。裁判官は許可状を出す | 資料02 |
| 第9条第6項 | 許可の範囲外の記録は提供してはならず、終わったら直ちにすべて消去する | 資料02 |
| 第9条第8項 | 使用者に、対象の電子計算機・罪名・許可状の日付などを通知する。所在が明らかでない場合などは除く。妨げのおそれがある間は、なくなった後に速やかに | 資料02 |
| 第9条第9項・第10項 | 公安委員会に報告。公安委員会は許可どおりかを確かめ、必要なら警察庁長官等に措置を指示する | 資料02 |
| 第9条第11項 | 権限は「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」 | 資料02 |
| 附則第1項 | 公布の日から6か月を超えない範囲で政令で定める日から施行 | 資料02 |
| 附則第2項 | 自衛隊法の関係する条にも、新しい第8条・第9条を書き加える | 資料02 |
比べ方の注意
- 警察庁の参考資料は、背景として「匿名・流動型犯罪グループによる強盗、詐欺等が全国で多発」「令和7年の特殊詐欺被害額は過去最悪」と書いています(資料03)
- 法律案の新しい第9条の調査は、本文の字では「被害防止措置」(第8条の措置)のための情報を取る仕組みで、刑事訴訟法の捜査の手続きとは別に書かれています(第9条第11項)
資料
資料の一覧(5件)
| 番号 | 資料 | 種類 | 確かめた日 |
|---|---|---|---|
| 01 | 衆議院「閣法 第222回国会 15 警察官職務執行法の一部を改正する法律案」議案審議経過情報 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DE3626.htm 参議院の議案のページ https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/222/meisai/m222080222015.htm | 公式資料 | 2026-10-25(衆議院の受理 2026年10月16日。付託の欄は空。参議院のページの提出日 10月16日・衆先議・所管 警察庁) |
| 02 | 警察庁 同法律案「案文・理由」(PDF 9ページ)・「要綱」(PDF 2ページ) https://www.npa.go.jp/laws/kokkai/20261016/02_anbun_riyuu.pdf https://www.npa.go.jp/laws/kokkai/20261016/01_youkou.pdf | 公式資料 | 2026-10-25(本文の第8条・第9条・附則・理由を読んだ) |
| 03 | 警察庁 同法律案「参考資料」(概要。PDF 1ページ) https://www.npa.go.jp/laws/kokkai/20261016/05_sankoushiryou.pdf 一覧のページ https://www.npa.go.jp/laws/kokkai/index.html | 公式資料 | 2026-10-25 |
| 04 | 国会会議録 衆議院 本会議 2026年10月5日 #23(高市内閣総理大臣の所信表明演説) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122205254X00120261005/23 | 会議録 | 2026-10-25 |
| 05 | 国会会議録検索システム https://kokkai.ndl.go.jp/ | 会議録 | 2026-10-25 18時台に、会議の一覧の API で第222回国会を検索。28件。この法律案を審議した会議録は0件 |
国会のやりとり
字は国会会議録のとおりです。[中略]の所は、会議録の字を省きました。
2026年10月5日 衆議院 本会議(所信表明演説)(資料04)
高市早苗 内閣総理大臣 #23
[中略]また、国民の皆様の暮らしを脅かすいわゆるトクリュウなどによる悪質な犯罪の被害を防止するため、警察官の職務執行において、匿名性、秘匿性の高い通信アプリへの対応など、重大犯罪による被害を防止するための措置がとれるよう制度を見直します。[中略]
法律案そのものを審議した会議の会議録は、2026年10月25日の時点でありません(資料05)。
経過
| 日付 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 2026年10月5日 | 高市首相が所信表明演説で、制度を見直すと述べた | 資料04 |
| 2026年10月16日 | 内閣が法律案を国会に提出(衆議院が受理) | 資料01 |
| 2026年10月25日現在 | 衆議院の付託の欄は空 | 資料01 |
| この後 | 付託・審議・採決と会派の賛否は、衆参の記録に載ったらここに足します | 資料01 |
訂正の記録
なし
確かめた所と読むときの注意
確かめた所
- 第8条・第9条の中身と施行の日は、警察庁のページの法律案の本文(資料02)を読んで確かめました(2026年10月25日)
- 首相の演説の字は、国会会議録検索システムの API で取った本文と照らしました
- 提出の日と、付託の欄が空であることは、衆議院の議案のページ(資料01)で確かめました
読むときの注意
- 「重大犯罪」の範囲は、本文の定義の字によります
- 国会の審議が会議録に載ったら、質疑の字で足します
- 特殊詐欺の被害額などの背景の数は、警察庁の資料の字です
