国連演説の「安保理は機能していない」 首相が挙げたのは、常任理事国が自国の行為に係る決議に拒否権を使うこと 2022年2月と9月、ロシアの反対票で決議案が採択されなかった

テーマ:外交・国連|出来事:2022年2月25日(安保理の採決)〜2026年9月22日(首相の国連演説)|最終更新:2026年10月31日

首相の演説は、首相官邸のページの文字です。安保理と国連総会の記録は、国連の文書の原本(英語)で確かめました。日本語の訳は、このページの訳です。国会の発言は国会会議録の字です(# は会議録の発言番号)。

要点

  1. 首相は国連演説で、安保理が「機能していない」と言う理由に、ロシアのウクライナ侵略を挙げました。演説の文字では、「常任理事国が、他国を侵略し、その自国の行為に係る決議に拒否権を行使するような状況が起きています」と述べ、その上で「機能していないと言わざるを得ません」と続けています。(資料01)
  2. 2022年2月25日と9月30日、ロシアの反対票で、ウクライナについての安保理の決議案が採択されませんでした。2月25日の決議案(S/2022/155)は賛成11・反対1・棄権3。9月30日の決議案(S/2022/720)は賛成10・反対1・棄権4。反対はどちらもロシア1か国です。議長は記録の中で、どちらも「常任理事国の反対票により」採択されなかったと述べています。(資料03・04)
  3. 憲章27条では、手続き以外の事項の決定に、常任理事国の「同意投票」が要ります。紛争の当事国が投票を控えると条文が定めているのは、第6章(紛争の平和的解決)と52条3項による決定のときです。2022年4月、国連総会は、拒否権が使われたら10執務日以内に総会を開いて討論すると決めました(決議76/262)。日本の政府は2022年の国会で、拒否権の行使は「最大限自制されるべき」と答えています。(資料02・05・06)

根拠

演説の段落(首相官邸の文字)

首相官邸の演説の文字(令和8年9月22日)のうち、この話題の段落です(資料01)。

三つ目の柱として、日本は、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・発展に貢献します。力または威圧による一方的な現状変更の試みは、国連憲章に掲げられた原則に反するものであり、世界のどこであっても認めることはできません。
その最たる例が、ロシアによるウクライナ侵略です。国際社会の平和と安全に特別な責任を有するはずの安全保障理事会の常任理事国が、他国を侵略し、その自国の行為に係る決議に拒否権を行使するような状況が起きています。このような現状では、安全保障理事会は、国際社会の平和のために機能していないと言わざるを得ません。

同じ演説では、このあと国連改革・旧敵国条項・安保理改革(常任理事国と非常任理事国の双方の拡大)の段落が続きます。旧敵国条項は別のページで扱っています。

安保理の採決の検算(安保理の記録)

日付決議案中身(記録の中の説明・このページの訳)賛成反対棄権結果出典
2022年2月25日S/2022/155ロシアにウクライナへの攻撃をただちにやめ、軍を撤退させるよう求める(UN News の説明)111(ロシア)3(中国・インド・アラブ首長国連邦)「常任理事国の1か国の反対票により」採択されず資料03
2022年9月30日S/2022/720ウクライナの領土で行われた「いわゆる住民投票」を違法として非難し、変更されたウクライナの状態を承認しないよう各国に求め、ロシアに軍の即時撤退を求める(提出したアメリカの説明)101(ロシア)4(ブラジル・中国・ガボン・インド)「常任理事国の反対票により」採択されず資料04

憲章の条文(このページの訳)

条文書いてあること出典
27条2項手続き事項の決定は、9か国の賛成投票で行う資料02
27条3項その他のすべての事項の決定は、常任理事国の同意投票を含む9か国の賛成投票で行う。ただし、第6章と52条3項による決定では、紛争の当事国は投票を控える資料02
108条憲章の改正は、総会の3分の2の賛成で採択し、常任理事国すべてを含む加盟国の3分の2が批准したときに効力を生じる資料02

比べ方の注意

拒否権のあとの総会(決議76/262)

資料

番号資料種類確かめた日
01首相官邸「国連総会における高市内閣総理大臣一般討論演説」令和8年9月22日
https://www.kantei.go.jp/jp/105/statement/2026/0922enzetsu.html
公式資料2026-10-25(全文を取得し、「安全保障理事会」「拒否権」「機能」で検索して段落を読んだ)
02国際連合「Charter of the United Nations(全文)」
https://www.un.org/en/about-us/un-charter/full-text
公式資料2026-10-25(23条・27条・108条の本文を読んだ)
03国連安全保障理事会 第8979回会合の記録 S/PV.8979(2022年2月25日)
https://documents.un.org/api/symbol/access?s=S/PV.8979&l=en&t=pdf
UN News「Russia blocks Security Council action on Ukraine」2022年2月26日
https://news.un.org/en/story/2022/02/1112802
公式資料2026-10-25(記録の表紙と投票の段を読んだ。記録は「Provisional(暫定版)」)
04国連安全保障理事会 第9143回会合の記録 S/PV.9143(2022年9月30日)
https://documents.un.org/api/symbol/access?s=S/PV.9143&l=en&t=pdf
公式資料2026-10-25(提出国の説明と投票の段を読んだ。記録は「Provisional(暫定版)」)
05国連総会決議 A/RES/76/262(2022年4月26日採択)
https://documents.un.org/api/symbol/access?s=A/RES/76/262&l=en&t=pdf
公式資料2026-10-25(本文2ページを読んだ)
06国会会議録 参議院 予算委員会 2022年3月14日 #6・#7(青山繁晴議員の質問と岸田総理の答弁)/衆議院 外務委員会 2022年3月23日 #39(林外務大臣)/参議院 決算委員会 2022年3月28日 #200(岸田総理)
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/120815261X01320220314/7
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/120803968X00620220323/39
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/120814103X00120220328/200
会議録2026-10-25
07国会会議録検索システム
https://kokkai.ndl.go.jp/
会議録2026-10-25 に、発言の API で発言者「高市早苗」・語「拒否権」(期間の指定なし)を検索して0件。会議の一覧の API で期間 2026-10-01〜2026-10-25 を検索して28件。衆議院の本会議は10月5日の1件だけ

国会のやりとり

字は国会会議録のとおりです。[中略]の所は、会議録の字を省きました。演説の前の、2022年の政府の答弁です。

2022年3月14日 参議院 予算委員会(資料06)

青山繁晴(自由民主党・国民の声)質問 #6

[中略]日本は今こそフランスと組んで、国連改革の一番リアルな、現実的な第一歩として、まず拒否権の制限、今まで全く制限ないわけですから、その拒否権の制限、それを設けること、その努力を始めるべきではないでしょうか。[中略]

岸田文雄 内閣総理大臣(当時)答弁 #7

今回の国際社会の平和と安定に大きな責任を持つ国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアのこの暴挙は、新たな国際秩序の枠組みの必要性を示していると考えています。
委員御指摘のように、我が国は、この常任理事国による拒否権の行使、従来から最大限自制されるべきであると考えてきました。そうした観点から、御指摘のこの大規模な残虐行為については、常任理事国五か国が自主的に拒否権行使を抑制すべきとするフランスとメキシコによる提案、これを支持しております。フランスとメキシコの提案は、日本を含む百五、百五か国から支持を得ています。一方、御指摘のように、ロシアを含む他の常任理事国からの支持はまだ得られていない、こうした状況にあります。
[中略]

2022年3月23日 衆議院 外務委員会(資料06)

林芳正 外務大臣(当時)#39

国連でございますが、さきの大戦後に、二度と戦争を起こさないための組織として創設されたわけでございますが、常任理事国には拒否権があり、特に、米ソ冷戦時代には、国連が国際の平和と安全の維持の機能、これを果たすことができなかったわけでございます。
国際社会の平和と安全に大きな責任を持つ国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアの暴挙、これは、こうした国連が抱える問題を改めて提起するものでありまして、新たな国際秩序の枠組みの必要性、これを示していると考えております。
[中略]

2022年3月28日 参議院 決算委員会(資料06)

岸田文雄 内閣総理大臣(当時)#200

まず、今回の事態は、国連の安全保障理事会の常任理事国であるロシア、すなわち国連において世界の平和と安定に大きな責任を担うはずの常任理事国ロシアが国際法を、国際法に違反する、国際秩序の枠組みを大きく変えようとする、こうした暴挙に出たことが大きな問題になっています。こうしたことから、従来どおり国連は機能するのかどうか、こうした懸念の声につながっているということであります。
[中略]

会派の名前は、会議録の会派の欄のとおりです。岸田総理の答弁は「百五か国」と述べています。

経過

日付出来事出典
2022年2月25日安保理で決議案 S/2022/155 が、ロシアの反対票で採択されず(賛成11・反対1・棄権3)資料03
2022年3月14日岸田総理が、拒否権の行使は「最大限自制されるべき」と答弁資料06
2022年4月26日国連総会が決議76/262 を採択(拒否権のあと10執務日以内に総会で討論)資料05
2022年9月30日安保理で決議案 S/2022/720 が、ロシアの反対票で採択されず(賛成10・反対1・棄権4)資料04
2026年9月22日首相が国連演説で「安全保障理事会は、国際社会の平和のために機能していないと言わざるを得ません」資料01
この後10月7日・8日の代表質問(演説の話題についての質問と首相の答弁)は、会議録に載ったらここに足します資料07

訂正の記録

なし

関連する解説動画

本編(22分38秒)
高市総理 国連演説 安保理は「機能していないと言わざるを得ません」ウクライナ・旧敵国条項
https://youtu.be/2enHmv5X80M

本編の章:

ショート:

本編には、選挙ドットコムちゃんねるの対談も使っています。中で話された見方は出演者のもので、このページの根拠とは別です。このページは本編の第2章(法の支配とウクライナ)の、演説の段落を扱いました。

確かめた所と読むときの注意

確かめた所

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