危険運転致死傷罪の改正 呼気1リットルにつき0.5ミリグラム以上、最高速度を50キロ(60キロ超の道は60キロ)超える速度に数値基準 2026年6月に全会一致で成立
テーマ:国会・交通|出来事:2026年3月31日(法律案の提出・参議院先議)〜2026年4月17日(参議院で可決)〜2026年6月25日(衆議院で可決・成立)〜2026年7月1日(公布)|最終更新:2026年10月31日

法律の中身は、衆議院のページに載っている法律案の本文の字です。国会の発言は、国会会議録の字です(# は会議録の発言番号)。会派の賛否は、衆議院の議案のページと、参議院の本会議の投票結果のページの記録のとおりです。
要点
- 飲酒運転の危険運転致死傷罪の要件「正常な運転が困難な状態」に、数値基準が入りました。血液1ミリリットルにつき1.0ミリグラム以上、又は呼気1リットルにつき0.5ミリグラム以上のアルコールを保有する状態です。数値に満たなくても、アルコールの影響で正常な運転が困難な状態なら、これまでどおり対象になります。(資料01・資料05 #6)
- 速度の出し過ぎが、危険運転致死傷罪の新しい類型になりました。最高速度が時速60キロ以下の道は最高速度を50キロ超える速度、60キロを超える道は60キロ超える速度以上です。それに準ずる速度で、重大な交通の危険を回避するのが著しく困難な高速度も対象です。(資料01)
- ことさらにタイヤを滑らせたり浮かせたりして、進行の制御を難しくして走らせる行為も、新しい類型です。道路交通法の酒酔い運転の罪にも、同じ数値基準を入れました。(資料01・資料04 #141)
- 参議院から先に審議し、参議院は2026年4月17日に賛成239・反対0、衆議院は6月25日に可決しました。衆議院の議案のページの会派態度は「全会一致」です。7月1日に法律第52号として公布され、公布から20日を経過した日から施行です。(資料01・02・03・資料06 #12)
根拠
法律の中身(法律案の本文)
| 改める所 | 中身 | 出典 |
|---|---|---|
| 自動車運転死傷処罰法 第2条第1号(飲酒) | 「アルコール影響正常運転困難状態」=血液1ミリリットルにつき1.0ミリグラム以上又は呼気1リットルにつき0.5ミリグラム以上のアルコールを保有する状態その他アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で、自動車を走行させる行為 | 資料01 |
| 同 第2条第2号(薬物) | 薬物の影響により正常な運転が困難な状態で走行させる行為(飲酒と分けて書く) | 資料01 |
| 同 第2条第4号(高速度・新) | 最高速度が時速60キロ以下なら最高速度を50キロ超える速度、60キロ超なら60キロ超える速度以上。その速度に準ずる、重大な交通の危険を回避するのが著しく困難な高速度 | 資料01 |
| 同 第2条第6号(新) | 殊更にタイヤを滑らせ又は浮かせることにより、進行の制御を困難な状態にさせて走行させる行為 | 資料01 |
| 道路交通法 第117条の2 | 酒酔い運転の罪の要件に、同じ数値(血液1.0ミリグラム・呼気0.5ミリグラム以上)を加える | 資料01 |
| 附則第1項 | 公布の日から起算して20日を経過した日から施行。施行前の行為には従前の例 | 資料01 |
高速度の数値基準を当てはめると(このページの足し算)
| 最高速度 | 数値基準の速度 |
|---|---|
| 時速30キロ | 時速80キロ以上 |
| 時速40キロ | 時速90キロ以上 |
| 時速60キロ | 時速110キロ以上 |
| 時速80キロ | 時速140キロ以上 |
| 時速100キロ | 時速160キロ以上 |
比べ方の注意
- 数値基準は、それ以上なら一律に当たる線です。法務省の刑事局長は、数値に満たない場合でも、個別の事情で要件を満たせば成立し得ると答えています(資料05 #6・#10)
- 0.5ミリグラムより低い数値(0.25・0.3ミリグラム)も法制審議会の部会で議論されたと、法務大臣が答えています(資料05 #48)
会派の賛否(記録にある粒度のまま)
参議院 本会議 2026年4月17日(押しボタンの投票)(資料03・資料06 #12):投票総数239・賛成239・反対0。議長は「全会一致をもって可決」と報告しました。
衆議院 本会議 2026年6月25日(異議の有無による採決)(資料02・資料07 #25・#26):衆議院の議案のページの会派態度は「全会一致」、賛成会派の欄は「自由民主党・無所属の会; 中道改革連合・無所属; 日本維新の会; 国民民主党・無所属クラブ; 参政党; チームみらい; 日本共産党」です。
資料
資料の一覧(7件)
| 番号 | 資料 | 種類 | 確かめた日 |
|---|---|---|---|
| 01 | 衆議院「閣法 第221回国会 42 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律及び道路交通法の一部を改正する法律案」提出時法律案 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g22109042.htm | 公式資料 | 2026-10-25(第1条・第2条・附則を読んだ) |
| 02 | 衆議院 同法律案の議案審議経過情報 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DE24AA.htm | 公式資料 | 2026-10-25(参議院 付託 4月13日 法務委員会・本会議 4月17日 可決/衆議院 受理 4月17日・付託 6月16日 法務委員会・審査終了 6月24日・本会議 6月25日 可決・公布 7月1日 法律第52号) |
| 03 | 参議院 同法律案の審議経過と本会議の投票結果 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/221/meisai/m221080221042.htm https://www.sangiin.go.jp/japanese/touhyoulist/221/221-0417-v002.htm | 公式資料 | 2026-10-25 |
| 04 | 国会会議録 参議院 法務委員会 2026年4月14日 #141(平口法務大臣の趣旨説明) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122115206X00420260414/141 | 会議録 | 2026-10-25 |
| 05 | 国会会議録 参議院 法務委員会 2026年4月16日 #5・#6(古庄玄知議員と法務省 刑事局長)・#9・#10(同)・#47・#48(川合孝典議員と平口法務大臣) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122115206X00520260416/6 | 会議録 | 2026-10-25 |
| 06 | 国会会議録 参議院 本会議 2026年4月17日 #9(法務委員長の報告)・#12(投票の結果) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122115254X00920260417/9 | 会議録 | 2026-10-25 |
| 07 | 国会会議録 衆議院 本会議 2026年6月25日 #24(法務委員長の報告)・#25・#26(採決) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/122105254X02720260625/24 | 会議録 | 2026-10-25 |
国会のやりとり
字は国会会議録のとおりです。[中略]の所は、会議録の字を省きました。
委員会では、法律に入った2つの数値の高さと、その決め方が問われました。呼気0.5ミリグラムと、最高速度を50キロか60キロ超える速度という線を、どういう考えで引いたのか。その答弁を並べます。
2026年4月16日 参議院 法務委員会(資料05)
古庄玄知 議員(自由民主党・無所属の会)#5
[中略]数値基準、これ、呼気アルコール濃度一リットル当たり〇・五ミリグラムというふうになっておりますけれども、聞くところによると、〇・三ミリグラム以上とすべきじゃないかという意見もあったそうです。
そこで、なぜ〇・五ミリグラムというふうな基準を採用したのか、その点について、政府参考人、お願いします。
佐藤淳 法務省刑事局長 #6
[中略]アルコール医学の知見によりますと、体内アルコール濃度が呼気一リットルにつき〇・五ミリグラムに至っている場合には、個人差を問わず、注意力や警戒心の低下、反応の遅延といった運転に必要不可欠な能力への影響が生じているとされているところでございます。[中略]
なお、数値基準は、あくまでも個別具体的な事情を問わずに一律に正常な運転が困難な状態であると認められる症状が生じる数値として認定しているものでありまして、この数値基準に満たない場合であっても、個別具体の事情に照らしまして正常な運転が困難な状態と認められる場合には危険運転致死傷罪が成立し得るところでございます。
古庄玄知 議員 #9
[中略]最高速度が六十キロ以下の道路の場合は五十キロオーバーした場合、それから最高速度六十キロ以上の道路は六十キロ以上オーバーした場合、この場合に危険運転致死傷罪が成立すると、こういう話なんですけれども、この基準も高過ぎるんじゃないかと、こういう意見が出ております。この辺、どういう根拠でこういう数字を基準として用いたのか。[中略]
佐藤淳 法務省刑事局長 #10
[中略]具体的な数値の在り方については、最高速度を遵守していれば回避できる障害物をおよそ回避できなくなる、これが、物理モデルに基づく理論的な限界速度を参考にしつつ、道路交通に関する社会通念をも考慮した結果、ここに定めるような数値基準以上の速度で自動車を運転する行為には一律に高度の対処困難性及び悪質性が認められると言えると考えられたことから、数値基準をこのように定めたものでございます。
なお、走行速度が数値基準を下回る場合であっても、数値基準に準じる速度であって道路及び交通の状況に応じて重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度との要件を満たすときは危険運転致死傷罪が成立し得るところでございます。
平口洋 法務大臣 #48
[中略]その上で、一リットルにつき〇・二五ミリグラム又は〇・三ミリグラムとすることについても議論が行われたものの、アルコール医学の知見によると、反証を許さずに一律に正常な運転が困難な状態に該当することとなる数値基準としては相当ではないとの異論が示され、幅広い支持を得るとは至らなかったものと承知をしております。[中略]
会派の名前は、会議録の会派の欄のとおりです。刑事局長は2つの答弁のどちらでも、数値に届かない場合でも罪が成立し得ると付け加えています。
経過
| 日付 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 2026年3月31日 | 内閣が参議院に提出(衆議院は予備審査として受理) | 資料02 |
| 2026年4月13日 | 参議院 法務委員会に付託 | 資料02・03 |
| 2026年4月14日 | 参議院 法務委員会で法務大臣の趣旨説明 | 資料04 |
| 2026年4月16日 | 参議院 法務委員会で質疑。全会一致で可決(附帯決議あり) | 資料05・資料06 #9 |
| 2026年4月17日 | 参議院 本会議で可決(賛成239・反対0)。衆議院が受理 | 資料02・06 |
| 2026年6月16日 | 衆議院 法務委員会に付託 | 資料02・資料07 #24 |
| 2026年6月24日 | 衆議院 法務委員会で質疑。全会一致で可決(附帯決議あり) | 資料07 #24 |
| 2026年6月25日 | 衆議院 本会議で可決。成立 | 資料02・07 |
| 2026年7月1日 | 公布(法律第52号) | 資料02 |
訂正の記録
なし
確かめた所と読むときの注意
確かめた所
- 法律の中身(飲酒の数値基準・薬物・高速度・タイヤを滑らせる行為・道路交通法の酒酔い運転・施行の日)は、衆議院のページの法律案の本文(資料01)を読んで確かめました(2026年10月25日)
- 高速度の表の数は、本文の基準に最高速度を足した、このページの計算です
- 提出・付託・可決・公布の日と、衆議院の会派の欄は、衆議院の議案のページ(資料02)で確かめました
- 参議院の票は、議長の報告(資料06 #12)と参議院の議案のページ(資料03)で確かめました
- 国会の字は、すべて国会会議録検索システムの API で取った本文と照らしました
読むときの注意
- 法制審議会の部会の議論は、法務大臣と刑事局長の答弁の字によります
- 施行の日は、公布から起算して20日を経過した日です
