TBS「ニュースの森」の「テープを見せたという事実はありません」 1995年10月の放送から1996年3月の訂正まで 杉尾秀哉議員は当時の番組のキャスター
テーマ:国会・放送|出来事:1995年10月19日(否定の放送)〜1996年5月22日(衆院逓信委の質疑)|最終更新:2026年10月31日
国会の発言は、国会会議録の字です(# は会議録の発言番号)。放送の文面は、1996年5月22日に郵政省の局長が国会で読み上げた字です。杉尾議員の経歴は、参議院の議員情報の字です。杉尾氏が番組のキャスターだったことと、1995年10月19日に否定の文面を読んだ人が誰かは、別のことです。
要点
- 1995年10月19日、TBS「ニュースの森」は「TBS社内の調査では、テープを見せたという事実はありません」と放送しました。この文面は、1996年5月22日に郵政省の放送行政局長が衆議院逓信委員会で読み上げたものです。局長は、読んだ人を「「ニュースの森」アナウンサー」と言い、名前は出していません。(資料01)
- 約5か月後の1996年3月25日、TBS は同じ「ニュースの森」の中で、テープを見せていたことを明らかにし、それまでの報道を訂正しておわびしました。テープを見せる指示をしたのは、ワイドショー「3時にあいましょう」の制作側の二人(曜日担当のプロデューサーと総合プロデューサー)だと、TBS の社長が国会で説明しています。4月30日の検証番組の最後に「ニュースの森」のキャスターが「私自身が番組の中で事実に反した報道をした」と述べた、と議員が国会で紹介しました。郵政省は、会社(TBS)に故意があったかという点について「故意はなかった」「故意とは違う」と答えました。これは当時の郵政省の、会社についての見解で、文面を読んだ人やキャスター個人について述べたものではありません。郵政省は同じ答弁で、故意の判断と責任をとるときの問題は「別だ」とも述べています。(資料01・02・03)
- 杉尾秀哉議員は、参議院の議員情報では「1993年4月より「ニュースの森」キャスター就任」です。1995年11月16日の新聞のテレビ欄には「ニュースの森 … 杉尾秀哉ほか」とあった、と議員が国会で読み上げています。ただし、番組のキャスターだったことと、10月19日に文面を読んだ人が誰かは別のことです。国会の答弁は読んだ人を「アナウンサー」とだけ言っています。読んだのが杉尾氏だったと1998年の本が書いている、と番組の調べにあります。2025年11月13日の雑誌の記事には、杉尾氏の話として「私たちは(局の不祥事を)憤りを持って検証して、その結果を番組にしました」が載っています。(資料04・05・06・07)
根拠
否定の放送から訂正まで(会議録の字)
| 日付 | 何があったか | 会議録の字 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 1989年10月26日 | オウムの幹部がTBSを訪れ、坂本弁護士のインタビューテープを見る | 「金曜日プロデューサーと総合プロデューサーの二人はオウムの要求に応じ、当該テープを彼らに見せる指示をした」(TBS 砂原社長) | 資料03 #6 |
| 1995年10月19日 | 日本テレビの報道。同じ日の「ニュースの森」が否定の放送 | 「TBS社内の調査では、テープを見せたという事実はありません」(郵政省が読み上げた放送の文面) | 資料01 #129・#132 |
| 1996年3月25日 | TBS が「ニュースの森」で、見せていたことを明らかにし、訂正・おわび | 「それまでの、見せていない、あるいは見せたという事実は出てこなかったといった報道が誤りであることを訂正するとともにおわびをいたしました」(TBS 磯崎社長) | 資料02 #215 |
| 1996年4月30日 | 検証番組。河村議員が、番組の最後に「ニュースの森」のキャスターが「事実に反した報道をした」と語った、と国会で紹介 | 「「ニュースの森」のキャスターが、[中略]私自身が番組の中で事実に反した報道をした、こういうふうに語っておられる」(河村たかし議員の紹介) | 資料01 #133 |
| 1996年5月22日 | 衆院逓信委で郵政省が答弁(会社に故意があったかについて) | 「会社に故意があったかどうか、こういうことであります。[中略]結論的には故意はなかった」(#130)/「故意とは違う、その時点における知っている事実をそのまま放送した」(#134) | 資料01 #130・#134 |
否定の放送(1995年10月19日)から訂正(1996年3月25日)までは、158日です(始めの日を数に入れない数え方。このページの計算)。
TBS の社長が国会で説明した、3月11日の調査報告が誤ったものとなった原因(資料03 #6)
社長はこの段を「本年三月十一日の当社の調査報告概要が誤ったものとなった原因について簡略に御報告いたします」と始めています。否定の放送だけの理由ではありません。「昨年九月段階」(1995年9月)から3月11日の誤った調査報告までの説明で、その中に10月19日の対応が出てきます。
- 「十月十九日に日本テレビがテープ問題を報道した際には、報道機関として冷静な判断を示し得ず、感情的な選択を行う結果となりました。その後も社内調査の限界を超えることができず、見せた記憶はないという二人のプロデューサーの証言を覆すことができませんでした」
- 処分:総合プロデューサーを4月30日に懲戒解雇、金曜日担当のプロデューサーは3月25日付で懲戒解雇。5月1日に社長・専務が辞任
比べ方の注意
- 否定の放送をしたのは「ニュースの森」という番組です。テープを見せる指示をしたのは、TBS の社長の説明では、別の番組(「3時にあいましょう」)の制作側の二人です(資料03 #6)
- 1996年4月3日の質疑で、矢島恒夫議員は「十月十九日に日本テレビがニュースで[中略]報道したときに、直ちに翌日の十月二十日の日にTBSのニュースでそういう事実はないという報道をし」と言っています(資料02 #214)。番組名は挙げずに述べています。矢島議員の言う日は「十月二十日」で、郵政省が文面を読み上げた「ニュースの森」の10月19日(#132)とは日付が1日ずれています。2つが同じ放送を指すかは要確認です。このページの「否定の放送」は、郵政省が文面を読み上げた10月19日の「ニュースの森」(#132。河村議員の #129 も「十月十九日」「夜」)のことです
杉尾議員の経歴と、本人の話
- 参議院の議員情報:「1981年4月、(株)東京放送入社。以来、報道局社会部、政治部などテレビ報道の最前線に従事。1993年4月より「ニュースの森」キャスター就任。その後外信部ワシントン支局長、社会部長などの役職をはさみ」(資料04)
- 1995年11月27日 参議院の特別委員会:中島眞人議員が、1995年11月16日の朝日新聞のテレビ欄に「ニュースの森 … 杉尾秀哉ほか」とあったと読み上げています(資料05 #189)。ビデオ問題とは別の話題の中での発言です
- 本人の話(SmartFLASH 2025年11月13日の記事):記事の地の文(記者の書いた所で、本人の言葉ではない)は「杉尾氏は検証番組で進行を担当していた」。記事に載った杉尾氏の話は「私たちは(局の不祥事を)憤りを持って検証して、その結果を番組にしました。しかし、今でもネットで(私が)『オウム事件の関係者』と書かれています。そう書かれてあっても、そのことについて聞かれたら、私は丁寧に説明するようにしています」(資料06)。記事は「と杉尾氏は話していた」と結んでおり、その前の段では「かつて本誌がインタビューで」とも書いています。
- 10月19日に読んだ人:原口和久『メディアの始末記―TBSビデオ問題』(1998年)が、杉尾氏が読んだと書いている、と番組の調べにあります(資料07)
- 会議録 API で、1995年1月1日〜1997年12月31日の衆参すべての会議を「杉尾」の語で探すと、出てくる発言は2件でした(2026-10-27 に取り直して確かめた。件数は API の numberOfRecords で2)。1件は上の #189、もう1件は1997年6月3日 参議院 文教委員会 #118 の「杉尾先生」(大学の講師の話で、別の人)。この探し方(語「杉尾」・この期間)で出てきた2件に、ビデオ問題の当事者として杉尾氏の名前が出た発言はありませんでした。会議録に名前が出るかどうかと、ビデオ問題との関わりの有無は、別のことです
資料
| 番号 | 資料 | 種類 | 確かめた日 |
|---|---|---|---|
| 01 | 国会会議録 衆議院 逓信委員会 第8号 1996年5月22日 #129〜#134 https://kokkai.ndl.go.jp/txt/113604816X00819960522/132 | 会議録 | 2026-10-27(会議録 API で取り直して照らした) |
| 02 | 国会会議録 衆議院 逓信委員会 第6号 1996年4月3日 #214・#215(TBS 磯崎社長) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/113604816X00619960403/215 | 会議録 | 2026-10-27(同上) |
| 03 | 国会会議録 参議院 逓信委員会 第10号 1996年5月30日 #6(TBS 砂原社長) https://kokkai.ndl.go.jp/txt/113614816X01019960530/6 | 会議録 | 2026-10-27(同上) |
| 04 | 参議院 議員情報「杉尾 秀哉」 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7016023.htm | 公式資料 | 2026-10-25(役職は「令和8年10月24日現在」総務委員会(長)) |
| 05 | 国会会議録 参議院 宗教法人等に関する特別委員会 第3号 1995年11月27日 #189 https://kokkai.ndl.go.jp/txt/113414446X00319951127/189 | 会議録 | 2026-10-27(同上) |
| 06 | SmartFLASH 2025年11月13日「立憲・杉尾議員、高市首相らの過去発言を厳しく追及もSNSで批判殺到…古巣TBSの「オウム不祥事」蒸し返しも」 https://smart-flash.jp/sociopolitics/377119/ | 報道 | 2026-10-27(本人の話の段と、その前の段を読んだ) |
| 07 | 原口和久『メディアの始末記―TBSビデオ問題』新風舎 1998年(ISBN 9784797405033) | 本 | 番組の調べの記録による |
国会のやりとり
字は国会会議録のとおりです。[中略]の所は、会議録の字を省きました。
1996年5月22日 衆議院 逓信委員会(資料01)
河村たかし(新進党)質問 #129
[中略]ではもうこれ、会社の認識としては、この時点に認識があって、だれかが見せたんだと言いながら、御承知のように、例の十月十九日の日本テレビの報道に対して、夜、「ニュースの森」で、社内調査ではと一言入れておりますけれども、見せた事実はない旨断定をしたと言うのは、事実を曲げた報道になるのじゃないですか、これは。
楠田修司 郵政省放送行政局長 答弁 #130
先生御指摘のところは最も慎重に検討したところでございます。御指摘の「報道は事実をまげないですること。」というところで、会社に故意があったかどうか、こういうことであります。
先ほど申し上げましたように、結論的には故意はなかった、こういうふうにしたわけであります。[中略]故意の判断をするときの問題と責任をとるときの問題とは別だ、こういうふうに考えます。[中略]
楠田修司 郵政省放送行政局長 答弁 #132
平成七年の十月十九日の「ニュースの森」アナウンサーの発言内容は、ちょっと読み上げさせていただきますが、「TBS社内の調査では、テープを見せたという事実はありません。一九八九年十月二十六日、オウム教団の早川紀代秀被告ら三人が訪れ、坂本弁護士事件のインタビューテープを見せろと要求しましたが、担当者はこの要求を拒否しました。取材テープを見せた事実もないことが確認されています」というものだったということであります。
河村たかし(新進党)質問 #133
[中略]四月三十日の三時間半余りの番組の中で、私もええかげんな質問じゃいけませんからちゃんと見ました、夜中まで。最後に、「ニュースの森」のキャスターが、真心からざんげをしたのだろうと思いますけれども、私自身が番組の中で事実に反した報道をした、こういうふうに語っておられるわけですね。[中略]
楠田修司 郵政省放送行政局長 答弁 #134
「ニュースの森」で、先ほど申し上げましたような事実に反した報道をしたわけでありますから、それを放送したということで訂正をされたわけであります。ただ、この事実に反した放送をしたというところの前の段階で故意があったかどうかということになりますと、これは故意とは違う、その時点における知っている事実をそのまま放送した、こういうことであります。
1996年4月3日 衆議院 逓信委員会(資料02)
磯崎洋三 株式会社東京放送代表取締役社長(参考人)#215
オウム報道に関する日本テレビとの関係は御指摘のとおりでございますが、これにつきましては、三月二十五日の「ニュースの森」の中で、TBSがテープを見せていたことを明らかにいたしております。また、それまでの、見せていない、あるいは見せたという事実は出てこなかったといった報道が誤りであることを訂正するとともにおわびをいたしました。[中略]
1996年5月30日 参議院 逓信委員会(資料03)
砂原幸雄 株式会社東京放送代表取締役社長(参考人)#6
[中略]一九八九年十月二十六日、「3時にあいましょう」の金曜日担当のプロデューサーが富士宮におけるオウム取材の際に坂本弁護士インタビューテープの存在をオウムに知らせ、その結果、同日夜、オウム幹部が当社千代田分室に来訪いたしました。金曜日プロデューサーと総合プロデューサーの二人はオウムの要求に応じ、当該テープを彼らに見せる指示をしたものです。[中略]
[中略]さらに、十月十九日に日本テレビがテープ問題を報道した際には、報道機関として冷静な判断を示し得ず、感情的な選択を行う結果となりました。[中略]
会派の名前は、会議録の会派の欄のとおりです。
経過
| 日付 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 1989年10月26日 | 「3時にあいましょう」の制作側の二人が、オウム幹部に坂本弁護士のインタビューテープを見せる指示をした(TBS 社長の説明) | 資料03 |
| 1993年4月 | 杉尾氏が「ニュースの森」のキャスターに就く | 資料04 |
| 1995年10月19日 | 日本テレビの報道。「ニュースの森」が「テープを見せたという事実はありません」と放送 | 資料01 |
| 1995年11月16日 | この日の新聞のテレビ欄に「ニュースの森 … 杉尾秀哉ほか」とあった、と中島議員が1995年11月27日の国会で読み上げ | 資料05 |
| 1996年3月25日 | TBS が「ニュースの森」で見せていたことを明らかにし、訂正・おわび。金曜日担当のプロデューサーを懲戒解雇 | 資料02・03 |
| 1996年4月30日 | 検証番組。総合プロデューサーを懲戒解雇 | 資料01・03 |
| 1996年5月1日 | 社長・専務が辞任 | 資料03 |
| 1996年5月22日 | 衆院逓信委で、否定の放送の文面の読み上げと、会社の故意についての「故意とは違う」の答弁 | 資料01 |
| 2025年11月13日 | 杉尾氏の話「憤りを持って検証して、その結果を番組にしました」が雑誌の記事に載る | 資料06 |
訂正の記録
なし
関連する解説動画
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本編(12分18秒)
杉尾秀哉議員の過去 TBSビデオ問題で「テープを見せたという事実はありません」と放送し訂正した番組のキャスター 議員としての国会での言葉は【2026年10月】
https://youtu.be/3F4LgEsRLBI
本編の章:
- 0:31 杉尾秀哉議員とは TBSビデオ問題とは
- 1:17 1996年の国会 郵政省が読み上げた「ニュースの森」の文面
- 1:53 その日の「ニュースの森」と杉尾氏
- 2:34 TBS社長「感情的な選択」
- 3:47 否定の放送から訂正まで 約5か月
- 4:10 キャスター「事実に反した報道をした」 郵政省「故意とは違う」
- 4:45 この件で確かめられること 杉尾氏の話
- 5:37 2018年 安倍首相「杉尾さんもTBS時代に」
- 6:45 2023年3月15日 高市大臣とのやり取り
本編の題と章の言い方は番組の見せ方です。このページでは、そのうち1:17〜4:45 の章(否定の放送から訂正まで)を、1996年の会議録で照らしました。
確かめた所と読むときの注意
確かめた所
- 否定の放送の文面・訂正とおわび・TBS の社長の説明・郵政省の「故意とは違う」は、会議録 API の本文で照らしました(2026年10月27日に取り直した)。郵政省の答弁は会社に故意があったかについてのもので(#130)、個人については述べていません
- 杉尾氏が1993年4月から「ニュースの森」のキャスターだったことは、参議院の議員情報で確かめました(2026年10月25日)
- 本人の話が SmartFLASH の2025年11月13日の記事に載っていることは、記事を開いて確かめました(2026年10月27日)
- 158日は、1995年10月19日から1996年3月25日までを数えた、このページの計算です
読むときの注意
- 1995年11月16日の新聞のテレビ欄は、中島議員が国会で読み上げた字(資料05 #189)によります
- 矢島議員の言う「十月二十日の日にTBSのニュース」(資料02 #214)と、10月19日の「ニュースの森」(#132)は日付が1日ずれています。同じ放送を指すかは要確認です
- SmartFLASH の記事は、坂本弁護士一家の事件を「1998年」と書いています。会議録では1989年の出来事なので、このページは会議録の年によります
